誕生日の先生














うみのイルカは自分の誕生日に恋人であるはたけ上忍に媚薬を飲ませてプレイする。

誤解が誤解を生んでとんでもない噂が広まっていた。



昨年の俺の誕生日。

カカシさんに欲しいものを聞かれた俺は何も思いつかなくて、
「気持ちだけで充分です」と当たり障りのない返事をしたのだが、納得してくれないカカシさんのしつこさに負けて、
「ではカカシ先生が、俺にプレゼントしたいと思うものをください」
なんて事を言ってしまったために、とんでもない騒動になってしまったのだった。
悩みに悩んだカカシさんは一人でぐるぐると考え込んでドツボに嵌り、果てはげっそりとやつれるほど悩みまくって、あちこちに支障をきたし、友人知人を巻き込んでの大騒ぎに発展させてしまった。

業を煮やしたカカシさんの友人の上忍達に、
「なんでもいいから欲しいものを決めてやってくれ」
と、入れ替わり立ち代り頭を下げられて、俺は生きた心地がしなかった。


「俺が欲しいものは一つだけです。しかも、もう既に手に入れています。カカシ先生がいてくれるだけで充分です」
そう俺が言ってやれば、カカシさんのやつれた顔は一瞬で真っ赤に染まって、そして嬉しそうな笑みが顔いっぱいに広がった。
そんな愛らしい姿を目にして、どんなにお騒がせでも本当に俺はこの人がいてくれるだけで充分過ぎるほど幸せだと思った。
「…お、俺もです。イルカ先生がいてくれるだけで他には何もいらないよ。それに俺はイルカ先生のものだけど……改めて…貰ってくれる?」



そして誕生日当日。

この人はとんでもない物を持ってやって来た。
「ね、イルカ先生。これ飲んでみて?俺、いつもイルカ先生に気持ちよくして貰っているから、今日はイルカ先生にもうんと気持ちよくなって貰いたくて…」
恥ずかしそうに差し出す錠剤は……暗部御用達の秘薬、媚薬と言うものじゃなかろうか?
「いえ、俺はいつも充分気持ちいいですよ。それに俺はカカシ先生が気持ちよくなってくれる方が嬉しいですし」
「…えっ?じゃあ…俺が飲むの?そうだよね、イルカ先生の誕生日だものね」
「そう言っているわけじゃ……あっ!」
目の前でカカシさんはゴクンと喉を鳴らして錠剤を飲み込んでしまった。
その後のことは、プライベート…のはずだったのだが、頭の痛いことに、カカシさんが媚薬を調達したと言う噂は既に広まっており、翌日にはそれをどちらが飲んだと言う話も、公然の秘密とばかりに瞬く間に広がってしまっのだった。


それが去年の誕生日のこと。




そして今年も誕生日の一ヶ月ほど前には、昨年と同じ質問が投げかけられた。

「イルカ先生、何か欲しいものはないですか?」
「カカシ先生がいてくださるだけで幸せですよ。欲しいものはいつだってあなただけです」
昨年と同じ轍は踏まない俺の返事にカカシさんは今年も変わらず初々しく真っ赤に染まった。
「じゃあ今年も改めて貰ってくださいね?」


「よ、イルカ、今年もがんばれよ」
「羨ましいね、イルカ先生!」
「イルカ、翌日は休暇を取らなくていいのかい?」
一週間ほど前から、同僚や上忍たちに、励まされるは、からかわれるは…
俺へのプレゼントは兵糧丸だったりマムシ酒だったり長芋だったり……

誤解だと声を大にして言いたいが、家に帰れば風呂上りの綺麗なカカシさんが、酔ったような濡れた瞳で、
「先生おめでとう。今年もプレゼント貰ってね」
と熱い身体で抱きついてくるから、噂の半分は真実かもしれない。







end








2008/05/26


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