カカシ先生のお誕生日小話









イチャパラとサンマと俺














「カカシ先生ー、誕生日、何か欲しいもんないってば?」
「ん?ああ、もうそんな時期か。何もいらないよ。特に欲しいものもないからねぇ」
カカシ先生の欲しいものを考えても考えても思いつかなかったから、俺は直球で聞くことにした。
カカシ先生の答えもほぼ予測済みだった。
でも、毎年、毎年、同じ答えを貰って、結局、夕飯もサンマで、これじゃあ恋人としていかん!と思ったわけだ。
俺だって、結構、貯金だってあるし、男として恋人にすんげー誕生日プレゼントをやりたい。

「なんでもいいってばよ。俺だって、もうカカシ先生くらい稼いでいるからな!どーんとねだってくれ!」
俺は胸を叩いた。
「んー、困ったねぇ……ホントにないんだよね」
「そんなことないだろ。よーく考えてくれってばよ。何か欲しいもののひとつくらいあるだろう」
元々、カカシ先生は物欲が薄い。
「ほら、考えてくれってばよ」
「そんな急に言われても……あ、そろそろ楔帷子を新調しようかと」
「却下だってばよ!そー言うんじゃなくって、普段着とか!そーだ、新しい服、買ってやるってばよ。何がいい?何がいいってば?」
「んーーー、別に今のところ、足りているしねぇ……困ったねぇ」
カカシ先生、しきりに困った困ったと首を捻って、眉をへにょりと下げる。
普段着だってほぼ忍服とおなじようなもんだ。
お洒落にはほど遠い。
ま、そんな所も可愛いんだけどな。


「じゃあさ、何か食べたいものはないってば?すげー高級レストランでもいいってばよ。家で食べたいなら、すげー高級食材でも手に入れて来るってばよ!」
俺は少し譲歩することにした。
「特に食べたいものもないねぇ」
「そう言う答えは駄目だってばよ。ちゃんと答える!」
「仕方ないねぇ。だったらサンマでいいよ」
「誕生日にまでサンマかよ〜〜。他にねーの?」
この答えも予測の範囲内だったが、いささか呆れる。
そんなにサンマが好きか。
この季節、サンマなんて三日に一度くらい食っているじゃないか。

「サンマ以外にないのー?」
「俺の誕生日なんでしょ。だったら好きな物がいいって言っているんだから、サンマでいいだろ」
「だってさー、去年もサンマだったじゃないかー。その前も、もしかしてその前もサンマだったぞ。良く飽きねーなー。先生ってば、好きな食べ物、変わらねーの?」
「そうそう好みが変わるわけないだろ。お前だって、子供の頃からラーメン好きは変わらないだろう」
「でもさぁ、年取ると味覚が変わるとか言うじゃねー」
「お前、失礼だね。俺はそんな年じゃないよ」
「わかったわかった、先生はまだまだ年じゃないってばよ」
「なんか、引っ掛かる言い方だねぇ」
カカシ先生はちょっと機嫌を損ねたみたいに俺を睨んだ。


「で、まだ年じゃない先生は、ずーっと変わらずサンマが好きなわけだ。そういや、同じ本もずっと読んでいるよなー。ホント、その本も良く飽きねーってばよ」
「イチャパラは名作だからね。俺の人生のバイブルと言っても過言ではない」
なぜかカカシ先生は、偉そうに言った。
あのエロ仙人の書いたエロ本のどこがいいのか、これだけは俺にはわかんねー。

「ま、人の好みはそんなに変わらないだろうしね。特に俺は一度好きになった物は、おいそれと飽きたりしないの」
「へーー」
そっか、そうなのか。
ふーん、カカシ先生ってば、物欲も少ねーし、執着心も少ねーけど、一度気にいったり好きになったら絶対に飽きたりしねーんだな。
そーか、そーか。
ふーん、ずっと好きなんだってば。
これって熱烈だってばよ。

「何、いきなりニヤニヤしてんのよ」
「べっつにー。じゃあ、誕生日にはカカシ先生の好きなものばっか作ってやるってばよ」
「俺の好きな物?」
先生は不思議そうに聞き返した。
先生の食べ物の好みはわかってる。
サンマ以外だと、結構、あっさりしたものが好きだ。
きっと先生は気付いていないものまで俺は気付いているかも知れないってばよ。

「サンマもいっぱい買っ来るってばよー。十匹?三十匹?百匹くらい買って来るかー?」
「ちょっ、ちょっとお待ち!そんなにいらないから!いっぺんにそんなに食えるわけないだろう!」
「来年も、再来年も、その次の年も、次の次の次の年も、そのまた次の次の次の年も、サンマでお祝するってばよ!」
なんたって、ずーっと好きなんだもんな!







end










2010/10/06




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