オトナルカカ   シリアス








When I get you alone






31.    32.    33.    34.










第四部     


31.


「今後の私の身の振り方なんだけどね」
今日もカカシ先生の作ってくれた夕食を食べて、俺が食後の茶を淹れてテーブルに戻って来た所で、カカシ先生は改まって話があると切り出して来た。

「そろそろ私もここを出てなんとかしないといけないと考えていたんだけれど、テンゾウが家に置いてくれるって言うんだよね」
「はっ?何、言っているってばよ?もう一度、言ってくれねーか、カカシさん」
俺にはカカシ先生が何を言い出したのか、さっぱりわからなかった。

「テンゾウがね、自分の家に来てもいいって言ってくれるんだ。だからしぱらくお世話になろうかなぁって」
カカシ先生は同じような台詞を繰り返したはずだか、俺にはやっぱり何を言っているのかわからなかった。
なんで、ここから出て行く話になってんだ?
なんで、ヤマト隊長の家に行くんだ?
何を言っているんだ?カカシ先生は……


「ここが……ここが嫌なのか?何か不便なことがあるなら、なんでも言ってくれってばよ。また影分身を置いておいてもいい。外を見に行きたいのなら、いつだって連れて行くってばよ」
俺は息も継がず早口で喋りまくった。
「いや、そうじゃないよ。ナルト君には感謝してもしきれないよ。ただ、いつまでもナルト君にお世話になっているわけにもいかないでしょう」
「な、なんで俺の所は駄目なんだってばよ!ヤマト隊長の所が良くて俺の所が駄目って、なんでだってばよ!」
「ナルト君の所が駄目なわけじゃなくって、家族でもないのに、いつまでも迷惑はかけられないでしょ」
「迷惑なんかじゃねーってばよ!俺がいつそんなことを言った?それとも、何かそんな誤解をさせちまったってば?ちっとも、全然、全く迷惑なんかじゃないから、記憶が戻らなくっても、いつまでだっても、ここにいて構わないってばよ!」

俺が一度でも迷惑なそぶりでも見せたか?
俺はカカシ先生がいてくれさえすれば幸せなのに。
思い出さなくったって、ここにいてくれていいんだ。
むしろ記憶も無いカカシ先生が、どこかに行っちまったらと思う方が俺には恐怖だ。
俺の目の届くところにいてくれ!


「でも、ほら、いつまでも私がいたら、色々と困ることもあるでしょう?」
「何がだってばよ?」
カカシ先生がいて俺がどう困るんだ?
俺がよっぽど間抜けな顔をしていたんだろう。
カカシ先生は困った顔に、ほんの少し笑みを浮かべた。

「私みたいなおじさんがいつまでも先生面して居座っていたんじゃ彼女とか呼び難いでしょう?私にばかりかまけていたら、振られちゃうぞ」
俺は開いた口が塞がらなくなってしまった。
か、彼女ってなんだよ!
どっから、そんなもんが出て来たんだよ!
なんで俺は、こんなことカカシ先生に言われているんだよ!



「彼女なんていねーってばよ。だからそんな心配はしなくていいってばよ」
「今いなくても、この先、きっと困るよ」
「ヤマト隊長だって彼女の一人や二人いるかもしれねーだろ」
ヤマト隊長のプライベートはしらねーけど。
いるだろ、きっと、いるに決まってる、彼女の一人や二人や、五人や十人、いや一ダースだって!

「残念なことにいないらしいんだよねぇ」
「いないなら早く彼女を作らなきゃならないのはヤマト隊長の方が先だってばよ。それに、彼女が出来たら、ヤマト隊長だっていい歳なんだから、すぐに、けっ、けっ、結婚だってするかも知れないってばよ!」
そうだってばよ。
別に俺はヤマト隊長の恋愛問題に口をはさむつもりはこれっぽっちもないけれど、断然応援するってばよ!

「それは……」
俺の興奮をよそに、カカシ先生は静かなままの調子だったけれど、ちょっと口籠った。
「それはって、なんだってばよ」
「それは、そう言うことは無いから安心して来てくださいって……。ナルト君も知っていることだと思うけれどテンゾウは……大蛇丸って言う人の実験体にされて遺伝子操作されているんでしょう?だから、子孫を残すつもりはありませんって言ってたよ」
確かにヤマト隊長の身体には初代火影の遺伝子が組み込まれている。
そしてヤマト隊長なら、そう考えていそうなこともわかる。
だけど、それとこれとは話が別だ。
ヤマト隊長の家族計画と俺とカカシ先生のことは別問題だろう!


「俺がいいって言ってるんだから、遠慮せずにいつまでも居てくれってばよ」
「本当にナルト君の気持ちは有り難いよ。だけど、本当に私が君の先生だったんなら、いつまでも弟子の世話になりっ放しになっているわけにもいかないじゃない」
「ヤマト隊長だって、後輩だってばよ。後輩ならいいのかよ」
「後輩って言っても、年も近いし、友達みたいな関係だったみたいだしね」
「ね、年齢なんか関係ないってばよ!」
「いやいやいや、それは大いに関係あるでしょう。ね、ともかくいい大人としては若いナルト君の邪魔をし続けるのは気が引けるから」


気が引けるって?
なんでだってばよ!
歳の差がどうした!
先生と生徒だから?
なんだよ、これ!
今更、何を言ってるんだってばよ!
チクショー、今更、どうして、こんなこと言われねーとならないんだよ!!


「と、年が近いなら、ゲキマユ先生ん家だって、アオバのおっちゃんの家だって、カカシ先生なら大歓迎だろ!ライドウのおっちゃんだって、ゲンマのおっちゃんだって、同期みたいなもんだろう!」
「うーん、ガイもね、家に来てもいいって言ってくれたんだけど、ほら奥さんいるでしょ。そんな家に居候出来るわけないじゃない。テンゾウなら独身だし」
「俺だって、結婚する気もねー。彼女だっていねー。だから、気にしないでいてくれってばよ」
「だから、それが拙いと思うんだよね。幾ら先生だったとしても私みたいなおっさんが側についていたら、ナルト君のチャンスを潰しちゃうでしょう」

何がチャンスだよ。
チャンスなら目の前にある。
俺がやり直したいと思っているチャンスは、今、ここにある。
俺が欲しいのも、一生一緒にいたいのも、カカシ先生ただ一人だ!









32.


「今日、ネジ君とヒナタさんが来てね」
興奮する俺をよそにカカシ先生は淡々とまた違う話を切り出して来た。
「ネジとヒナタが来たってば?点穴を見て貰ったのか?」
俺はネジが来るなんて話は聞いておらず、びっくりした。
「その点穴って言うの?彼らの白眼って言う目で見えるんだってね」
「チャ、チャクラの流れは見えたってば?」
カカシ先生は首を横に振った。

「チャクラは見えないって。でも点穴が塞がっているとかそう言うのでもないって言っていたよ。なんだかよくわからないね」
「そっか……白眼で見てもわからないのか……」
でも、チャクラなんか戻らなくたって構わない。
カカシ先生はカカシ先生だ。

「記憶も戻らないし、チャクラも無いんじゃ、私はこれから普通の人として生きていかなければならないでしょう?だったら、ナルト君の側に居ても何の役にも立ちそうもないしね。少し離れた場所で、これからのことを考えようと思うんだよ」
「カカシさんの言っていること、ちっともわかんないってばよ。普通の人として生活するなら、別にここにいてもいいじゃないか。ヤマト隊長が何か仕事でもくれるって言うのかよ。それとも、ヤマト隊長の世話でもするのが仕事だって言うのかよ」
俺の言い方はなんだかすげーいやらしい。
もう俺は滅茶苦茶だった。
だって本当にカカシ先生が何を言っているのか、俺には全く理解できないんだから……

「いや、いずれは私も一人で生活して行くつもりだよ」
「だから、カカシさんはコピー忍者のはたけカカシって言う有名人で、ビンゴブックにも載っているんだから、それなのに忍術も使えなくって、一人で暮らすのは危ないってばよ」
「顔を変えるなりなんなり手はあるでしょう。なにしろチャクラから私だってばれることもないんだから、好都合だよね」
グッドアイディアでしょう?とでも言うようにカカシ先生は笑う。
「顔を変えるーーー?折角治ったその綺麗な顔をどうにかしようって言うのか?!駄目だ、駄目だ、そんなこと絶対に許せないってばよ!」
何を馬鹿なことを言っているんだ?
折角、痕も残らず治ったと言うのに!

「ナルト君、おっさんの顔だから」
カカシ先生は今度は困ったように笑う。
駄々っ子をあやすように諭すような口調がむかつくってばよ!

「ね、そう言う台詞は女の子に言ってやりなさい。あのヒナタさん?あの子、きっと君のこと」
あまりにも頓珍漢なことばかり言うカカシ先生に俺はついに切れちまった。
拳でテーブルを思い切り叩きつけた。
その勢いで湯呑が倒れ、飲み残しの茶がテーブルいっぱいに零れた。

「ちょっと、ナルト君!」
慌てて台布巾を引き寄せて拭こうとするカカシ先生の手首を俺は掴んだ。
掴んだ腕をねじり上げて俺の方に引き寄せる。
「ナルト君!」
非難するように俺の名前を呼び、腕を振り払おうとするが、カカシ先生の力は赤子のように頼りない。
体重はかなり戻って来てもまだまだ細くって、鞭のようにしなやかな筋肉のついた身体からは程遠かった。


「カカシさん、俺、カカシさんに言っていないことがある。いつか思い出せばそれでいいと思っていた。自然に思い出すまで黙っているつもりだった。だけど、カカシさんがそんなわからないことばっかり言うんじゃ、俺も、もう黙ってらんねー」
俺の酷く真剣な声と睨みつけるような視線を受けて、カカシ先生の動きが止まった。









33.


驚愕に見開かれた右の瞳に俺が映っている。
いつもいつも俺を見守って来てくれた深い色の瞳が、昔と変わらずに俺の姿を映していると言うのに、この瞳は俺を覚えていない。

こんな時でも、やはり左目は開かれることはない。
この閉じられたままの瞼を見る度に、俺は本当にカカシ先生は記憶を失っているのか不思議に思うことがある。
記憶を失っていてさえ、ずっと閉じているなんて、これはもう習性みたいなのなのだろうか。
この閉じられた瞳の奥に眠る写輪眼は、何か覚えているのだろうか……

俺はカカシ先生の身体を強く引き寄せ自分の胸に巻き込んで、上から顔を覗き込み瞳の奥を見詰め続けた。
「ナ、ナルトくん?ちょっと……あの、離して……顔、近いよ?」
カカシ先生はぎよっとしたように身を固くし、抵抗しようと身じろぐが、俺の力の方が強い。


思い出せ。

思い出せ。

思い出せ。

この瞳に映っている男の事を思い出せ!


俺がいつまでも黙ったまま見詰め続けていると、カカシ先生の瞳には、ほんの少しの怯えが浮かんで来たような気がした。
俺を見て怯えるなんて、以前のカカシ先生だったら絶対にないことだ。

俺はおかしくなってしまった。
薄く笑った俺の表情に、カカシ先生の顔が強張る。

「なんで、そんなに怯えるんだってばよ」
「ナルト君、離して」
「カカシさんに俺が酷いことでもするとでも思っていのるか?」
「…………」
「俺がそんなことするわけねーだろ。大事なカカシさんにさ。カカシさんはさ……」
「………っ………」
掴んでいる手首をギリギリときつく握りしめれば、カカシ先生の顔が苦痛に歪む。
そして俺を見詰める瞳が険しくなった。



俺が怖いのか?

そんな目で見るな!

俺のことをそんな目で見ないでくれってばよ!

本当に何にも、これっぽっちも俺のこと覚えていないのかよ!

見知らぬ男を見るような、そんな眼差しで俺を見るな!


俺の心の中で湧き上がった悲鳴は声にならず、俺はただ無言でカカシ先生の軽い身体を引き摺り起こし、すぐ後ろのベッドに乱暴に突き飛ばした。
慌てて起き上ろうとするカカシ先生の身体に、体重を掛けて圧し掛かる。
下半身に馬乗りになり押さえつける。

「ナルト君!」
カカシ先生は何が起こったのかわからないと言った顔をしている。
声には驚きと、非難が混じっていた。
俺は無言でカカシ先生の着ていたパジャマの上着を掴み、ボタンが弾け飛ぶのも構わずに思い切り左右に開いた。

「ナルト君!悪ふざけはやめて!」
カカシ先生が困惑と恐怖を入り混じらせて叫ぶ。

ふざけてなんかねー。
俺はふざけてなんかねー。
カカシ先生が消えた五年前から、俺はもう何をしていても辛くって、一度だって心の底から笑ったことはねー。
ふざけてんのはカカシ先生だろ?
何もかも忘れちまうなんて。
俺のこと全て消し去ってしまったなんて。
そんなに……
そんなに俺の事を……


俺の手がパジャマのズボンに掛かると、カカシ先生は無茶苦茶に抵抗を始めた。
だけど弱ったカカシ先生の体力じゃ、なんの抵抗にもならない。
俺はやすやすとカカシ先生の身体から衣類を剥ぎ取って行った。
「ナルト君!馬鹿なことは止めなさい!ナルト君!いい加減にしないと、本気で怒るよ!」

ナルト君、ナルト君って、五月蠅いってばよ。
ナルト君って誰だってばよ?
そんな風に呼ぶのは誰だ?


先生!

先生!

カカシ先生!

俺の名前を呼んでくれ!

ナルトって俺の名前を呼んでくれ!

そして、俺を見てくれ!


カカシ先生!!









34.


カカシ先生は俺に押さえつけられた下で滅茶苦茶に暴れだそうとするが、今のカカシ先生なんか簡単に抑え込める。
力ではかなわないと知って、カカシ先生は大声で罵倒し続ける。
止めろとか、ふざけるなとか、気でも違ったかとか……


五月蠅い、五月蠅い、五月蠅い!


俺は、そんな抵抗を物ともせず、ただ我武者羅にカカシ先生の身体を引裂き裂いた。
部屋の中に断末魔の叫びのような悲鳴が迸る。


五月蠅い、五月蠅い、五月蠅い!


苦痛と恐怖に引き攣るカカシ先生の顔。
信じられないと言うように目一杯見開かれた瞳。
驚きを通り越して、まるで見知らぬ化け物を見るような瞳だった。


そんな目で俺を見るな!

そんな目で俺を見ないでくれってばよ!


そんな視線で見つめられることに耐えきれなくなって、俺はカカシ先生の身体を乱暴に引っ繰り返した。
そして血を流し滑りが良くなったそこに、衰えぬ怒張を再び最奥まで一気に突き入れた。
掠れた悲鳴が部屋いっぱいに広がる。
カカシ先生のそこは滑りこそ僅かに良くなったが、硬く俺を拒み続けている。
構わずに、俺はその硬い身体を押し開き蹂躙した。
前へ前へと逃れようとするカカシ先生の身体。
以前より更に細い腰を痣が出来るほど強く掴んで引き摺り寄せる。
叫び続けていたカカシ先生の声が段々と弱弱しく枯れて行く。


ナルトだってばよ!
俺の名前はナルトだってばよ!
そんな意味のない悲鳴を上げているのなら、俺の名前を呼んでくれ!
昔みたいに、一言でいい、俺の名前を呼んでくれ!!!

なんで……
どうして、俺の名前を呼んでくれない?
どうして、俺のこと忘れちまったんだ?
そんなに俺から逃げたかったのか?

俺の中に嵐のように逆巻く様々な感情。
だが、もう全ては言葉にならなかった。
俺はカカシ先生を詰る代わりに、カカシ先生の身体に凶器を叩きつけた。
深く深くカカシ先生の全てを抉るように、全てをカカシ先生の身体にぶつけた。

いつしかカカシ先生の身体はぐったりとして来て、俺に揺さぶられるままになり、叫び声も上がらなくなって行った。


どのくらいの時間が経っただろう。
打ち捨てられた人形のようにズタボロになったカカシ先生の身体から俺はようやく自身を引き抜いた。




「なんでこんな……」
気を失ってしまったかと思っていたカカシ先生が、うつ伏せに伏したまま、掠れた声で呟いた。
「なんでって、決まっているだろう。俺とカカシ先生は恋人同士だったからに決まっているだろう」
全く、カカシ先生は記憶を失って物分かりが悪くなったってばよ。
俺は呆れたような冷たい声でそう答えた。
「……!」
俺から顔を背けていたカカシ先生だったけれど、思わずと言った感じで振り返った。
信じられないと言う顔をしている。

「恋人を差し置いて、他所の男の所に行くなんてつれないってばよ。カカシ先生は俺の恋人なんだから、いつまでもここにいてくれていいんだ。なんの気兼ねもいらねーってばよ」
カカシ先生は一体、どこまで驚くんだろう。
蒼褪めていた顔から、更に血の気が引いて行くようだった。

俺の言葉が信じられねーって言うのか?
記憶を失っても、疑り深くて頑固なところは変わらねーなんて、おかしくって笑えるってばよ。

「カカシ先生だって、ただの弟子がこんなに面倒をみるのがおかしいと思っていたんだろう?」
俺は後ろからカカシ先生の肩を、そっと抱きしめた。
「記憶喪失なんてへんてこなもんになっちまって、忘れていたのは仕方ねーけど、カカシ先生ってば酷いことばっか言うもんだから、俺、ちっと頭に来ちまったってばよ」
カカシ先生の汗ばんでいる身体が強張る。
汗をかいているのに冷たい身体だった。

「いつか思い出してくれればいいと思って黙っていたけど、早く言っちまえばよかったってばよ」
尖った肩に額を押し付けて、俺はそう囁いた。
「思い出さなくても、ずっとずっとここにいてくれていいってばよ。俺が一生、一生、ずっと面倒見る……」
強張ったまま動かないカカシ先生を抱きしめて、俺は囁き続けた。

「カカシ先生は、俺の恋人なんだから、なんの気兼ねもいらねーってばよ」
冷たい身体に熱を分け与えるように、俺は全身でカカシ先生の身体を包み込んだ。

「大丈夫だってばよ。カカシ先生は安心していてくれ。俺といれば安心だってばよ」
カカシ先生は身を固くしたまま、何も答えなかった。


大丈夫だ。

こうして何度も何度も混ざり合えば、すぐに戻るってばよ。


昔の俺たちに……


戻るってばよ………





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